メギド72における多様性について ―4周年に向けて―

 良いゲームを経験することは良い人生の一条件ですが、皆さん、良いゲームをしていますでしょうか。
 良いゲームの条件はいろいろありますが、その一つとして「プレイヤーのそれぞれがやりたいことをやりたい時にできる」ことが挙げられるでしょう。例えばマリオシリーズは良いゲームだと言ってよかろうと思うのですが、あれがなぜ良いゲームかというと、やりたいときにやりたいことを好きなだけできるからというのがあります。もちろんピーチ姫を助けるのが開発者の意図したプレイの目標なんでしょうけど、プレイヤーにとってはピーチ姫の救出がどれほど遅れようが関係ないわけです。というわけで、好きなステージを延々周回してもいいし、無限1upに精を出してもいい。めり込める場所がないか探してひたすら壁にぶつかるのもいいでしょう。そのようなゲームの本来の意図から逸れた行動をどれだけやってもゲームの進行に支障をきたすことはありません。ピーチ姫とクッパはいつまでもお城でマリオを待ってくれています。ゲームに飽きたら別のゲームをやって、好きな時にマリオの世界に帰ってくればいいのです。「プレイヤーのそれぞれがやりたいことをやりたい時にできる」というのはこういうことです。換言すれば、それは「多様性が許容されている」ということになります。

 この視点で言えば、現実は結構なクソゲーです。現実は、現実を作っている開発の思惑通りのプレイをしない人間を許容しません。運営の想定するプレイを民衆に伝えてそれに沿ったプレイのできるプレイヤーを製造するシステムが公教育です。例えば「時間を守る」というのは代表的な「運営の意図するプレイ」です。遅刻すると先生からうるさく言われるのは、遅刻するような人間を運営は歓迎しないからです。「時は金なり」という資本主義の精神は公教育システムを通して再生産を繰り返し、その道徳に従わない人間を排除します。現実は多様性の尊重を謳いますがあれは嘘で、その証拠として会社に寝坊して遅刻するような個性は一般に尊重されませんし、運営が尊重を呼びかけることもしません。このように現実は運営の意図したとおりにしかプレイできず、それに反抗しようとするとプレイに支障をきたすようにできています。本当に多様性を尊重する気があるのなら、多様なプレイヤーを現実に適合させるのではなく、現実を多様なプレイヤーに適合させるべきであるはずですが、現実の運営はそういう発想をあまりしません。こういうわけで、現実はかなりのクソゲーです。

 現実がこのようにクソゲーなのでせめて虚構の世界くらいは良ゲーであってほしいものですが、昨今のゲームシーンを彩るソシャゲは、筆者の狭い経験する範囲では、往々にして現実のようなクソゲーになる傾向にあります。プレイの多様性に対する許容度が低い。運営の想定するゴールがあって、そこに向かおうとしない人間は他のプレイヤーから置いてけぼりにされ、そのことによってさらにゴールに向かうのが困難になる、そのような構造を抱えています。ソシャゲのボスは一般に、クッパのようにのんびりとプレイヤーを待っていてはくれないのです。
 
 メギド72は、このようなソシャゲにありがちな構造を免れている数少ないゲームのひとつです。例えばメギド72のエンドコンテンツはメギド(操作キャラ)全員を☆6に進化させたり、オーブの☆を重ねたり、霊宝と呼ばれる装備品を作成したりすることなんですけど、どっちもやりたくなければやらなくていいし、やらないことによってほかのプレイヤーに遅れをとることもないんですよね。スタミナドリンク(AP回復アイテム)が豊富に配布されているので、他のゲームが忙しい時は他のゲームをして、時間があるときにメギドをすればいい。時間がない時にメギドを進めたければ、攻略チケット(クリア済みコンテンツのクリア報酬を即座に入手できるアイテム)を使えばいい。特にこの攻略チケットの存在は重要で、これがあることにより周回というソシャゲの巨悪から脱することが可能になっています。一回だけ金冠クリアすればいいので、倒せるとわかってる敵を何度も倒すという追い出し部屋のような不条理がない。何と素晴らしいことか。まあ星間の禁域の大幻獣は周回を求められるんだけど…。
 他にも、PvPをやりたければしてもいいししなくてもいい、メギドの個別ストーリーを読みたければ読んでもいい。いずれもやりたい時にやりたい分だけやることができます。期間限定のイベントは期限がありますが、ガチャを回す用の石だけ回収するのであればそんなに時間をかけずに終わらせることができますし、それ以上の報酬を求めての周回はしてもいいし、しなくてもそんなに困らない感じです。

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メギド育成のやる気がないことがバレるスクショ

 メギドについても、「このメギドを持っていないと他のプレイヤーとの差が開いてしまう」ということがないのも良いところ。これは「オーブ」というシステムによって可能になっています。例えば状態異常の「睡眠」は素の状態ではグシオンやリリムなどごく一部のメギドしか敵に与えることができませんが、「霊魂ムース」というオーブ(かなり簡単に手に入る)を装備させれば誰でも(霊魂ムースとスタイルが合致しているメギドであれば)睡眠を付与することが可能になれます。このようにオーブの持たせ方によってメギドに多様な役割を持たせることができ、それによって、どんなメギドでも活躍することができる環境が生まれています。プレイヤーが使いたいキャラを使えばいいし、好きなキャラ以外のキャラのためにガチャを回さなければならないという事態もあ起こりません。

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オーブ育成のやる気がないことがバレるスクショ

 ソシャゲはちょっとやらない期間があるとすぐに他のプレイヤーとの差が開いて、運営も進んだプレイヤーに合わせて環境を整備するのでますます差が開いて、という悪循環に陥りがちで、自分はそれが原因で離れてしまったソシャゲが多々あるんですけど、メギド72はプレイヤーそれぞれのペースで、やりたいことをやりたい時にやりたい分だけできるという多様性が確保されているので、2年くらい続けることができていますし、たぶんこれからも続けることができるんじゃないかと思っています。
 メギド72はストーリー面で「多様性の尊重」を重要なテーマにしていますが、それをゲームの運営の精神としても持っていることが、他のソシャゲにない最大の美点だと思います。メギド72はもうすぐ4周年を迎えますが、この先もずっとこの美点を大切にしてほしいと、一人のプレイヤーとして願っています。

 

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まあ自分の「多様性」ってつまりはこういう事なんですけど…

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この先も俺の多様性もずっと尊重してくれメギドくん 頼むこの通りだ