感度0倍退魔忍

はかせ :できたぞじょしゅ君、退魔忍の感度を0倍にする薬じゃ。

じょしゅ:この人はとてもアホだなと思ったけど、よく考えたらかなりすごいやつじゃん。医療とかで実際に活用できそう。

はかせ :見た目もイカすじゃろ。

じょしゅ:ドリンクバーで適当なジュースを適当に混ぜてついでにテーブルの上にあったスパイスも適当に混ぜて、誰も手が付けられなくなった液体っぽさがある。

はかせ :これを飲むと、あらゆる感覚のうち、性的快楽の感覚のみが全く感じられなくなる。痛覚とかは普通に感じる。

じょしゅ:範囲狭すぎて思ったより有効活用できそうにないな。あとそこだけピンポイントに無効にするの無駄にすごいな。

はかせ :この薬を使って、ある実験を行う

じょしゅ:絶対ロクでもないやつだ。

はかせ :ここに感度0倍薬と同時に完成させた退魔忍強制アクメ移行薬がある。

じょしゅ:この人はとてもアホだな。

はかせ :誤解しているようだが、退魔忍に性的快楽を与えて絶頂させる薬ではないぞい。そうではなく、性的快楽の有無に関わらず退魔忍の身体を「絶頂した状態」にする薬なんじゃ。

じょしゅ:確かに誤解してたけど、正しく理解してもこの人はアホだという認識は変わらないよ。

はかせ :この薬を摂取した退魔忍は、心拍数が上昇し、全身が紅潮したり痙攣したりし、「んほぉぉぉぉぉ♡イグぅぅぅぅぅ♡♡♡」と発声する。性的快楽の刺激を与えられていないにもかかわらず、じゃ

じょしゅ:何がしたいのか全然理解できない。普通の媚薬作れよ

はかせ :しかもこれらの薬、普通に飲むことができるほか、皮膚に触れただけでも効果が出る

じょしゅ:危険すぎる。

はかせ :さてここからが重要なところじゃ。今回開発した2つの薬、すなわち「感度0倍薬」と「強制アクメ移行薬」を同時に飲んだ退魔忍は、どうなると思う?

じょしゅ:あまりにも下らなくて考える気が起きない。

はかせ :――「アクメした状態」になるんじゃ。外側から観察する限りにおいては。おそらくの。しかし、退魔忍の内部においては性的快楽は全く感じられておらん。つまり、「本人は全く感じていないのにアクメしたのと同じ身体的現象が観察される」という、奇妙なことになるんじゃ。では、この現象が生じたとき、われわれはそれをどのように解釈すべきか。すなわち、このような状態の退魔忍を「アクメした/している」とみなすことができるか否か。ワシはこの問いは、アクメという現象の本質に関わる重要な問いであると思っている。

じょしゅ:たぶんそれを重要だと思ってるのは世界中ではかせだけだから、はかせだけで考えればいいと思うよ。

はかせ :ワシの思うに、「アクメしている/していない」というのは、「本人にとってそうである」というのと「外側から観察してそうである」というのとは切り離して考えるべきであるんじゃなかろうか。おそらく、強制アクメ移行薬を飲んだ退魔忍の状態は、外側から見れば「アクメしている」とみなすのに十分に妥当なものであるが、一方で今回の場合その退魔忍は感じていないから「アクメしていない」とみなすのが妥当と言えるじゃろう。だから、この退魔忍は「内的にはアクメしていないが、外的にはアクメしている」状態であると言える。というか、そのように考えるべきということになる、というのが今のワシの予想じゃ。

じょしゅ:本当に一人で考えたよ。

はかせ :とは言うものの、これらの薬が実際に退魔忍に効くかどうかは確認しておらんから、早く試さんとの。「感じていないのにアクメしているのと同じ状態など実現しえない」などとぬかすアホが出てくるのを防ぐために、現実にそのような状態が起こりうるということはきちんと示さんといかんからの。退魔マウスや退魔モルモットでの実験は全て成功したから、退魔忍でも成功するはずじゃと思うんじゃが。

じょしゅ:退魔マウスとか退魔モルモットとかいるんだ。あまりにかわいそう。というか、そんな治験絶対倫理委員会の審査通らないからやめときなよ。

はかせ :よーし適当な退魔忍を見つけてくるぞ~。

じょしゅ:うわっこの人無理やり実験する気だ!やめろ!そういうのはヘルシンキ宣言で禁止されてるって習っただろ!

はかせ :あっ

ポロッ

バシャッ

はかせ :んほぉぉぉぉぉ♡♡♡イグぅぅぅぅぅ♡♡♡♡

じょしゅ:この人退魔忍だったんだ…